みなさん、こんにちは!
山岳トレーナーの mitsu です。
みなさんは、「ココヘリ」を御存じですか?広告や周りに契約している人も増えてきて何かと耳にする機会が増えてきています。
実は、私はまだココヘリの契約をしていません。山岳保険はもちろん加入していますのでそれほど必要性を感じなかったからです。私は元損保マンでしたので保険についてはある程度の知見は持っているつもりです。そういった保険の観点からもいろいろ情報をお伝えできればなって思ってます。
ちなみに、私はココヘリへの問い合わせを行い、ココヘリに加入することを決めました。登山する人全員が必要か否かの結論は出ていませんが、その判断の一助としていただければ幸いです。
「ココヘリ」とは!?
ココヘリとは簡単に言ってしまえば、「捜索サービスが付随した山岳保険」といったところでしょうか。契約についての詳しいことはココヘリのHPを見てもらった方が分かりやすいですし、私の範疇ではないので割愛させていただきます。
ココヘリのサービス
まず、捜索サービスがどういったものかを端的に言えば、ココヘリ専用の発信機を貸与され、捜索の際にはその電波を受信して居場所を発見するという機能です。
捜索を開始してもらうには、本人やご家族がココヘリに捜索の依頼をする必要があります。
また、勘違いされている方も多いのですがココヘリ提携のヘリコプターは救助活動(1次救助)を行うことができません。遭難者の居場所を特定するために飛行します。
遭難者の居場所を特定し、警察や消防のヘリ、若しくは地上からの救助(山岳救助隊、遭難対策協会(以下、遭対協という、民間救助団体)を行います。
なお、県警のヘリなどにもココヘリの受信機が搭載されるようになり、ココヘリを持っていると県警や消防のヘリに発見してもらえる可能性が格段に高くなります。
捜索から救助の具体的な流れ
(ココヘリには関係なく救助要請をする場合)
遭難事故発生(仮に滑落として登山道から見えないところま落ちてしまったことを想定します。)
※ 電波が通じる場所であればその場で救助要請ができますが、電波が無い場所であれば電波の届くところまで移動する必要があります。
↓
本人または同行者・発見者が通報(110 or 119)
基本的には山岳事故の救助において、救助の技術レベルは(警察>消防)になります。救助を要請する場合は110番に連絡した方が無難だと思います。(消防の人が見ていたらごめんなさい…)
救助要請した場合、要請者は詳細の情報をヒアリングされます。
例えば…(各県警、自治体、山域によって異なります)
※あくまでも電波が繋がるところでの話です。
- 現在地(緯度経度などを聞かれることも…)
- 計画書の提出について(提出していても確認の為、いろいろ聞かれます)
- 要求者の個人情報(緊急連絡先など)
- 当日着ている服やザックなどの装備品の色
- 滑落状況
- 生存の有無や、けがの状況について
- 現地の天気、風、視界
- 当日の行程
その他、もろもろ…
一度電話を切って、山岳救助隊にバトンタッチ。
再度、山岳救助隊の方から連絡が入り、上記と同様のことを聞かれて一度電話を切ります。
救助隊の方でヘリの手配が可能か…、地上からの救助隊の掛け付けが可能か、など調整をした後に、どのような形で救助に向かうか説明の連絡があります。
おおよそ、救助要請をしてどのような形で救助に来てもらえるかの連絡があるまでに30分~1時間程度の時間を要し、その間に何度も電話を切っては待ち…が繰り返されます。
余談ですが、
救助を呼ぶ側も、寒い時期であれば当然防寒の対策が必要ですし、何度も電話をする関係で電池残量も必要です。山では機内モードにしておかないと電池残量はみるみるうちに減っていきますので、モバイルバッテリーを持ってて命拾いするケースもあると思います。
この流れで、すぐにヘリによる救助活動が可能だった場合はおおよそ30分~1時間程度、救助隊若しくは遭対協に救助活動が現場に向かってくれる場合は場所とタイミング、季節にもよりますが早ければ1時間~3時間程度で救助隊が駆け付けてくれることになるでしょう。
もし、ヘリが他の救助で出ていて、すぐに飛べない。近くに救助隊がおらずすぐに向かえないというケースも多くあり、その場合は翌日以降の救助になる可能性も十分にあります。
救助を要請したからと言って、すぐに駆け付けてくれるのは非常に稀なことであり、救助を待つ時間に体温や体力を奪われないようなビバーグ技術を身に付けておくことも非常に重要です。
そして、警察や消防による対応がすぐにできないときに役立つのがココヘリということになります。
ココヘリでは救助をしてくれない?
冒頭にもお伝えした通り、大前提としてココヘリでは要救助者を直接救助するような1次救助をすることはできません。
例えば、救助要請をした際に、警察や消防ですぐに救助に向かえない状況及び要救者の居場所が分からない、そういう場合にはココヘリの提携しているヘリが捜索にあたってくれます。
要救助者の居場所が分かれば、その情報を警察、若しくは民間の救助団体(会社)に共有して救助活動を始めるといった流れになります。
ココヘリの救助費用の補償について
ココヘリでは救助費用の補償をしてくれます。
ただし、なんでもかんでも補償してくれるという訳ではありません。
ココヘリが救助費用を補償するのは規約上、ココヘリが手配した救助活動のみということになります。ですので要救者やその遺族が直接民間の救助団体(会社)に依頼した救助活動においては補償の対象外となりますので注意が必要です。
ココヘリが要請していない救助費用の補償の特例も…
ココヘリで救助を依頼していない救助活動においても特例として、費用補償が認められる救助活動もあります。それが警察、消防、遭対協などの公共もしくは公共と連携している団体による活動です。
まず、救助要請をするのは警察(110)若しくは消防(119)となり、ココヘリの承諾を得てからの救助活動開始ではどうしてもタイムラグが発生してしまいます。また、遭対協は警察と連携しながら常に動いているの扱いは同等となります。
とは言っても、
上記での説明の通り、ココヘリの規約上「ココヘリが手配した救助活動の費用を補償する」ことになっていますで、ココヘリとしては警察に連絡をした後に、ココヘリにも救助依頼をした旨の一報が欲しいということを言っています。
遭難事故発生、その時に何をすればいいのか…
① 警察、若しくは消防に救助要請
② ココヘリに連絡(救助要請をした旨の連絡)
※救助要請の際はココヘリへの連絡もお忘れなく!
ココヘリを契約するメリットとデメリット
メリット
- 遭難時に警察や消防の捜索で見つけてもらえる確率が増える
- 遭難者の居場所(遭難現場)がわからない場合に電波を基に捜索できる
- 警察や消防がすぐに動けない場合でも提携ヘリコプターが捜索してくれる
- 捜索が打ち切られた際にも、捜索の対応をしてもらえる
デメリット
- 提携ヘリでは一次救助ができない。(即座の救助活動はできない)
- 家族などの駆けつけ費用などは補償されない
- 捜索費用のみの補償で医療費や死亡保険金は保証対象外
- ココヘリ単体の契約では補償が限定的。併用してその他の保険が必要
ココヘリの一番のメリットは遭難場所が分からない場合、警察や消防が捜索する際にも居場所をいち早く特定してくれるので遭難者の生存率が上がるということです。
提携ヘリはありますが、一次救助ができないというのは、結局のところすぐ動いてほしい時には警察や消防任せになってしまい、魅力が半減してしまうと個人的には思います。
リアルな話になりますが、遭難事故が発生して、残念ながら命を落としてしまったとしても、遺族としてはそのご遺体が戻ってくることを祈っています。(遭難事故でご遺体が見つからないケースは以外にも少なくありません。)そのような時でもココヘリがあればご遺体が見つかる可能性もあがるので、家族の為にも入る必要性はあると思います。
保険によっては、遭難してご遺体が見つからなかった場合はすぐに死亡保険金が支払われません。(失踪宣告が認められる7年の期間が必要な場合もあります。)
また、「ココヘリだけ契約しておけば十分!」という内容でもないのでココヘリと、その他の山岳保険(医療保険)と併用して加入する必要があり、費用が増えてしまうことになります。
計画書の提出について
ココヘリのHPには捜索するのにあたって、「計画書の提出が必要」となっています。ふと疑問に思ったのは、計画書を何らかの要因(例えば、電子申請などの通信エラーなど)で提出がされていなかった状況で、遭難が発生した場合、捜索はしてもらえないのかという疑問についてココヘリの事務局に確認したところ下記のような返答がいただけました。
- もし計画書が提出されていなくても捜索活動は行い、費用の補償もする
- 計画書が提出されてなく、居場所の見当が付かない場合は捜索できない
- 提出できなかったとしても、LINEやメールなどで家族には行き先をしっかり伝えてほしい
- 登山届(登山計画書)にはココヘリIDを記載してほしい
という回答でした。
結論的には、計画書が提出されていなても、捜索もするし、それに対しても費用も補償するけど、「行き先が分からないけど、帰ってこないから捜索してほしい」ということはできませんよ。ということでした。
グループ登山での計画書の提出
グループ登山においても、代表者が登山届(登山計画書)を提出すれば問題ありません。個々にそれぞれ提出の必要はありませんので、ココヘリを契約している方は、代表者に個人情報を伝える際には、ココヘリIDも忘れずに伝えましょう!
ココヘリのまとめ
要救助者の居場所の早期発見に役立つツールだと思いますが、実際に遭難しました、電波が入りません、という状況ではその場で救助を求めることはできません。ココヘリの捜索のトリガーは、「本人及び家族からの救助要請」です。
近年、山岳地帯では携帯の電波が繋がるところも増えてきましたが、依然電波が入らないポイントも多く存在します。そうなると下山予定の日時が過ぎて初めて遭難したという事実を認識するケースも少なくありません。
とても便利なサービスだとは思いますが、完全なものではありません。遭難を防ぐには技術を上げて、自分のあった山に登ることが非常に大切です。また、もしもの遭難時に対応できるような技術や知識も生存率を上げる方法で、ココヘリに加入するより大切なことだと思います。
ココヘリは、お守りとして契約するのはお勧めしますが、それと同時に自己研鑽して遭難の未然防止に繋げていただければと切に願います。