それでは今回はその「残雪期」の八ヶ岳・権現岳の情報をお伝えします。
夏の山を経験して今後、本格的に冬山(雪山)を挑戦しようと考えていれば、このくらいのルートができるようでなければなりません。 そんな冬山の登竜門的な位置づけの山です
権現岳(八ヶ岳連峰)
八ヶ岳では「南八ヶ岳」に位置し、主峰・赤岳と同様に人気の高い山。南八ヶ岳の中でも編笠山と並び最南にある標高:2,715m。山頂付近は岩場も多くその荒々しい見た目ではあるが比較的登りやすい。
ルートデータ
天女山入り口ゲート(天女山) → 三ッ頭 → 権現岳 <ピストン>
※11月下旬~4月下旬は「天女山」及び「観音平」まで冬季通行止め
※本記事は3月下旬の画像
標高差 1,335m(天女山~ 1,186m)
天女山入り口ゲート 1,380m(天女山 1,529m)
権現岳 山頂 2,715m
コースタイム 9h 20m
登り 5h 30m
下り 3h 50m
無雪期においては観音平から網笠山を経由して権現岳の山頂というルートが一般的ですが、11月下旬から4月下旬までは観音平及び天女山までの道は冬季封鎖されてしまうので、この期間に権現岳に日帰りで登ろうとすると「天女山入り口ゲート」から登るという選択肢しかありません。
体力 ★★★☆☆
岩場歩き ★★☆☆☆
アイゼン歩行 ★☆☆☆☆
冬山技術 ★☆☆☆☆
ロープワーク ☆☆☆☆☆
※あくまでも【残雪期3~5月】のレベル基準
登山口情報
駐車場
ゲートの閉まっている交差点付近に 6~7台程度の駐車スペースあり
※4月末以降は天女山(山頂)に50台ほどの駐車まで可能
アクセス
自家用車の場合
長坂 IC(中央自動車道) → 県道 28号線 → 天女山入り口
八王子 ICから(東京方面から長坂IC 経由) 127km 約1時間 40分
小牧 JCTから(名古屋方面から長坂IC 経由) 217km 約3時間
電車の場合
甲斐大泉(JR 小海線) → (タクシー利用) → 天女山入口 <2.5km 約5分>
東京駅からの甲斐大泉までの乗車時間 2時間 15分
名古屋駅からの甲斐大泉までの乗車時間 2時間 45分
登山ルート紹介
標高差 1,300m超の日帰りではまずまずの長さですが「権現岳」は 樹林帯歩きから岩場歩きを手軽に楽しめる充実のルートです。
天女山入り口 ~ 天の河原
4月下旬までは「天女山入口」の信号のところでゲートが閉まっているのでゲート周辺の駐車スペースに車を停めてそこから歩き始めます。
ゲートを越えて100mほど上がると「標高1,375m」の看板がありその先に木製の階段があるのでそこから登山道へ入っていきます。
天女山までは30分前後で到着します。山頂付近にトイレがありますがゲートが開いていない期間は封鎖されているので使用は不可です。
駐車場から天の河原までも観光客が多いせいか登山道はしっかり整備されています。登山口から天の河原までは特に危険な個所はなく勾配も比較的緩やかです。
天の河原 ~ 三ッ前頭
天の河原を越えると間もなく所々雪ができました。(3月下旬)この時期はその年の降雪量によって積雪量が大きく変わってくるので事前情報を集めてからのほうが無難です。このルートの一番キツイのは、前三ッ頭までの急登です。天の河原からしばらくは緩やかな道が続きますが突然、斜度が急になってその後しばらくその斜度が続きます。
尾根を登って稜線に出たらそこが「前三ッ頭」です。特に冬型の気圧配置になると西側から猛烈な風が吹くことがあるので稜線に出る前に休憩などを済ませないと稜線ではとても休憩できるような状況ではありません。
前三ッ頭まで登ってしまえば、あとは斜度が緩んだ稜線歩きとなり三ッ頭手前では再び斜度が出てきますが、距離は短いのでそれほどキツク感じることはないと思います。
ここまで来ると360度のパノラマ。富士山や南アに加え御嶽、中ア、乗鞍、北アなどの山脈もばっちり望めます。
コースタイムではここからあと1時間で山頂です。
三ッ頭 ~ 権現岳(山頂)
三ッ頭からは一度下って、コル、樹林帯を越えると一気に山頂が近づいてきます。風が強いときは樹林帯であれば多少風を交わすので休憩などでは樹林帯をうまく使うといいでしょう。山頂直下の岩峰までは尾根通しで登っていき、大きな岩が目の前に現れた左の方向へ大きくトラバース。
時期や雪の量によってこのトラバースが難しくなるのでコンディションを見ながらルート取りを選んでいきましょう。
トラバース時に左側の斜面は切れているので、足やアイゼンをひっかけないように注意しながら歩きましょう。ピッケルを使ってバランスを取りながら歩くのがコツです。
この周辺は、過去の別の記録を見ると雪がなくなりトラバースができず上記岩と岩の間を登ったという記述がありました。その上部ではかなりの急斜面で例え登れたとしても下るほうが難しいので要注意です。しっかりしたリーダーの元、ロープを使わなければ通過できないようなコンディションもあり得ます。
そのような場合、ロープを扱えるようなリーダーがいないときは勇気ある撤退を考えてください。登山事故の大半は下山時によるものなので絶対に無理はしないこと。
ここまでくればもうテンションが上がるのみ、登頂まであとわずかです。所々岩があったりするのでアイゼンの歯をしっかりと噛ませながら確実に登っていきましょう。
山頂からは南八ヶ岳の荒々しい山々の眺望がすばらしいです。風が弱い時なら山頂でゆっくりコーヒーや食事にするのもいいですね。
山頂からは日本アルプスの名だたる山々が眺望できる素晴らしいロケーションです。山頂の少し先まで行くと赤岳に続くキレットを望むことができるので時間と体力に余裕のある方は足を延ばしてもいいかもしれません。
下山時の注意
特に際立って危険な場所はありませんが、山頂付近の岩場、トラバースはアイゼンをひっかけないように1歩1歩着実に歩きましょう。
また、視界の悪い時に稜線では場所によって別の尾根に降りて行ってしまう箇所が何ヶ所かあります。地図やGPSを駆使してルートを外さないように気を付けましょう。
登山装備
- 冬季登山靴(ソールが硬めの3シーズン靴なら可)
- ピッケル +(ストック → 必要な人は…)
- アイゼン
- ハードシェル(暖かければ 雨具でも可)
- 補助ロープ
- サングラス
- 防寒具(ダウン、厚手の手袋、バラクラバなど)
- バックパック
- 帽子
- 手袋
- 日焼け止め
- 行動食
- テルモス(飲み物)
残雪期・権現岳のまとめ
残雪期における権現岳では目立った危険個所はないので比較的容易に行ける部類の山です。しかし、残雪期(3月~6月)は荒れれば真冬並みのコンディションン位なる可能性は高いので山行当日の天気はこまめにチェックすることが必要です。また、八ヶ岳は独立峰のため強風に見舞われる可能性は高いので防風、防寒対策をしっかりお願いします。
冬山(雪山)の経験者であれば特に問題ありませんが、これから雪の上を初めて歩く(山で)という方はしっかりしたリーダー、もしくは経験豊富な経験者と一緒に行くことを強くお勧めします。