奥穂~西穂を縦走するために必要なこと…

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みなさん、こんにちは!
山岳トレーナーのmitsuです。

今年もあちこちで沢山の山岳事故が発生して残念ながら亡くなった方も沢山いらっしゃいます。そんな中でもSNSの影響も受けて今や「憧れ」から「人気のルート」に変わってしまった奥穂高~西穂高の縦走について私の見解も含めて皆さんにお伝えできればと思います。

奥西縦走、ジャンダルムを目標にされている方、今後本ルートへ行こうと思っていらっしゃる方、そんな方は是非最後までお読みください。

多くの方が憧れる、奥穂高~西穂高の縦走をされる場合はいろいろなルート、行程が想定されますが、メジャーどころで言えば、

主な奥西縦走の行程

① 上高地(もしくは新穂高ロープウェー)~西穂山荘(泊)~西穂高岳~奥穂高岳~穂高岳山荘(泊)涸沢経由で上高地(もしくは岳沢経由(重太郎新道下降で上高地)【2泊3日】

② 上高地~涸沢(もしくは重太郎新道経由)~穂高岳山荘(泊)~奥穂高岳~西穂高岳~西穂山荘~上高地(もしくは新穂高ロープウェー)【1泊2日】

こんなパターンがメジャーな行き方だと思います。

比較的、チャレンジしやすいのは①の西穂高岳~奥穂高に2泊での行程です。

その理由としては…

・ アップダウンがある中でも、険しい道が登りになる

・ 時間的な余裕がある(体力消耗が最低限)

という点になります。

②の場合は仮に2泊にしたとしても初日はいずれにしても穂高岳山荘まで行かないといけないので、前日の疲労も残りますし、3日目は西穂山荘からの下りだけ。そして馬の背などの緊張が強いられる場所などが下りになるということで、①にくらべれば難易度はどうしても上がってしまいます。

奥西縦走における技術的な核心ポイント

  • 馬の背
  • ロバの耳
  • ガラガラな間ノ岳

細かなことを言えばもっとたくさんありますが、大きなところではこの3カ所です…

しかし、これはあくまでも技術的な核心(最も難しい)ポイントです。

私の考える本当の核心は実はここではないのです。

奥西縦走における最大の核心とは…
1ミスも許されない緊張を強いられる険しい岩稜帯が6~7時間ずっと続くということ。 それに耐えられる集中力と強靭な体力、技術的・精神的な余裕が必要

奥西縦走における難しさはこういう点にあると私は思います。

多少の強弱はありますが、西穂高岳~奥穂高岳までの間はず~っと、1ミスも許されない岩稜帯が続きます。切れ落ちていない箇所も所々ありますが、そこだって平坦ではないですし、つまずいて転んだらどこまで転がり落ちるか分かりません。当然無傷ではいられないでしょう。

技術的な核心は個人的には馬の背だと思いますし、ここは、とはいってもせいぜい10mほど。つま先だけが掛かるような場所に足を乗せバランスも求められますが、こういう緊張した場面で事故を起こすのは稀です。事故を起こすとしたら、微妙に緩んだ場所で浮石によって踏み外すとか、落石を誘発させて被害にあうとか、疲労からボーっとしてルーファイをミスするとかそういった類の事故の方が圧倒的に多いです。

私の山岳会でも奥西縦走がしたいという新人さんが時々いますが、Noの判断を下すこともしばしばあります。その理由としては技術的に「無理」と言っているわけではなく、体力的に厳しいことが9割以上です。

どこに行ければ、奥西縦走の挑戦権が得られるか…と問われますが、〇〇に行ければ奥西縦走ができるといったそういったものはありません。

例え、その場所にフラフラしながらギリギリで行ってきたとしても、それでは「行けた」ということにはなりませんしね。

岩場を、安定してスムーズに、落石などを起こさずに余裕をもって登れるという歩行技術、そして最低でも10時間くらいは余裕をもって行動できる体力は最低限必要だと思います。

ですので強いて奥西縦走前にどこでトレーニングをすればいいかと聞かれれば次のようなところでしょうね。

奥西縦走前のトレーニングルート(北アルプス)

  • 大キレット
  • 涸沢岳~北穂高岳
  • 剱岳 別山尾根
  • 鹿島槍~五竜岳(八峰キレット)
  • 唐松岳~白馬岳

せめてこのくらいの少し長めの岩稜帯ルートを安定して歩く歩行技術が必要ですよね…

これに加えて、体力も必要ですので、

  • 鹿島槍ヶ岳(赤岩尾根、若しくは柏原新道から)日帰り
  • 五竜岳(遠見尾根、若しくは八方尾根から)日帰り
  • 白馬三山周回(猿倉から)日帰り
  • 扇沢~柏原新道~種池山荘~針ノ木岳~針ノ木雪渓~扇沢(周回)日帰り
  • 三股~常念岳~蝶ヶ岳~三股 トライアングル 日帰り

このくらいの距離をせめて12~13キロくらいのザックを担いで登れないとダメですね。

これらが、体力的にも技術的にも余裕をもって歩けるだけのレベルになって初めて行けるのが奥西縦走です。繰り返しになりますが、これらも行けただけではダメです。

あくまでも

★ 技術的には、安定してスムーズに、落石などを起こさない歩行で

★ 体力的にも余力を残して

行くことができて…という話です。

体力や技術の他にも…

さぁ、このような技術や体力が実際につきました。Let’sチャレンジ!…

と言いたいところですがちょっと待って!

その他にも大切なことが沢山あります。

それは登山における守りの部分…

みなさんツェルトは持っていますか?ツェルトの使い方、緊急時のビバーグの方法知ってますか?、ウェアリングや装備計画分かっていますか?地図読み、ルートファインディングできますか?(携帯だけに頼っていませんか?電源が落ちる、GPSにズレが生じるそんなこともありますよ。)、登山計画しっかりできますか?自分自身がCT(コースタイム)に対してどのくらいで歩けるか把握していますか?ファストエイド持っていますか?けがの応急処置などできますか?

先日も、奥西縦走のルートで、すぐに救助隊が駆け付けられなくて、亡くなった事故もありましたが、ひょっとしたらそのような技術があれば一命は取り止められたかもしれません。

救助は呼べばすぐに来てくれると思っている方が多いと思いますが、そんなことありません。時間、天候、他の事故との兼ね合い…etc すぐに救助に来てもらえないことも多々あることを知っておいてください。

そしてこのようなハードルをしっかりクリアしてから奥西に挑戦するっていうのがセオリーです。

もし、この様なハードルがクリアできておらず「行ってきた」という方がいらっしゃれば、その方はたまたま、条件が良くて行けちゃった人…ということになりますよね?

実際問題、それだけの準備をして挑戦したって事故は100%防ぐことはできませんが、確実に事故を減らすことはできます。無謀な挑戦にならないように、身の丈に合った登山を…そして挑戦をするのであればしっかり地力をつけてから挑戦してほしいと願っております。

決して、挑戦することは悪いことではないですのでそこは勘違いをしないでくださいね!

しっかりとした準備をした上で挑戦するような意識になっていただければ嬉しい限りです。

このままでは、「危ない=入山禁止」にもなりかねません。

ぜひ、自分自身のレベルを把握して憧れのルートに挑戦してください!